無口な小説家は墓を掘る

※書きかけ小説の冒頭。

 幕開け

痛い痛いと泣いているあの子の手は真っ黒だった。

 死にたくないと希うあの子の泣き顔を見ながら思うのは、私も似た顔をしているのだろうということ。

 胸が痛む。哀しい。ううん、苦しい?

 それでも、ザカリザカリと動く手を止められない。

 殺さなければ。

 あの子を殺さなければ、死ぬのは私で。

 そして、大切な私の半身も道ずれになる。

 それは予感を通り超えた予知にも似たモノ。

 何が一番大切なのか。

 私は決めたのだ。

 決めたはずなのだ。

 だから私は必死に手を動かしている。

 あの子と同じくらいに手が黒くなるのも気にせずに。

 そしてようやく終わりが来る。

 この瞬間を待ち望んでいたように朝日が目に射しこんでくる。

 まるで舞台のひと間。

 あつらえたようなタイミング。

 眩しい。

「ふふっ」

 自然と笑いがこぼれた。それと同時に意識が遠ざかっていく。

 そのまま素直に意識を手放すとカラン、と小さな音が私に語りかけた。

『これで、さようなら?』

 うん、ごめんね。

 もう2度と会わないように埋めてしまうね。